COLUMN

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イラストレーターのビジネス知識

2020.04.22

著作権のことをもっと知ろう 第3回

Q著作権の概念が生まれたのはいつ頃ですか。またその背景にはどんなことがありましたか。
A1710年、イギリスのアン王女により版権保護を目的として最初の著作権法が定められました(アン法)。
明治以降日本にその概念が紹介されました。
15世紀の半ばにグーテンベルグが活版印刷術を発明し、本の世界に一大変革が起きました。従来は、オリジナルの書物に対しては、書写・木版印刷という複製方法しかなかったのですが、活版印刷術によって本を大量に発行することが可能になりました。鉛で出来た活字を組み合わせれば、誰でも簡単にオリジナルのコピーを大量に作れるようになったわけです。いわゆる海賊版です。そうなると、著作者の創作意欲・経済的利益も損なわれます(もっとも、初期の頃は著作者と結びついていた出版業者の利益ですが)。そこで、著作者・出版業者にオリジナルをコピーする権利を独占的・排他的に与えたのが、著作権保護の始まりです。

日本に「著作権」の概念を初めて紹介したのは福沢諭吉であるといわれています。
明治元(1868)年の『西洋事情外編巻之三』のなかでイギリスの経済書を紹介して、「copyright」(コピーライト)を「蔵版の免許」と訳しています。この語はやがて「版権」「板権」として広まります。明治初期は、幕末に結ばれた不平等条約の撤廃が悲願でした。イギリス等との間で通商航海条約が締結されていますが、そのなかで撤廃の交換条件として「ベルヌ条約」(1886年制定)への加盟が求められていました。そしてベルヌ条約に加盟するために、オブザーバーとして創設会議に参加した在イタリア公使館参事官・黒川誠一郎が、フランス語の「droit d'auteur litteraire」を「著作権」と訳しています。「著作」という語は漢語に由来する「書かれた文章」という意味です。その後、原義を離れて現在の用語法でいう「芸術」一般にも適用されるものとして広まり、「著作権」の概念が生まれたのです。

この「著作権」という語は、明治32(1899)年に制定された著作権法(「旧著作権法」)によって、それまでの出版条例などで用いられてきた「版権」に代わって正式用語となりました。

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