COLUMN

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イラストレーターのビジネス知識

2021.02.05

著作権のことをもっと知ろう 第12回

Q著作権保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されましたが、イラストレーターにどのような影響がありますか。
A立場によってメリットを感じる人とそうでない人がいますが、デメリットを指摘する意見もあります。
保護期間の延長で権利相続者が経済的利益を受けられる期間は長くなりますが、その時には本人は亡くなっているわけですから、直接の恩恵にあずかれるわけではありません。イラストレーターは基本的に著作権利用料の形で収入を得ていますが、広告はあくまで一過性の仕事です。著作者の死後も長期に渡って刊行される書籍はごく一部ですし、その場合でも改装によってヴィジュアルが変更されることも多く、同じ絵が使われ続けるのはレアケースと言えるでしょう。絵本では画料も印税で払われるケースが多く、ロングセラーになれば子孫の代まで経済的恩恵を受けられる可能性がありますが、それで創作者のモチベーションが高まるかどうか疑問です。

逆に利用者の立場からは、作者が亡くなった古い著作物を利用する際、現在の権利者(多くは相続人)から利用許諾を得るために著作権を相続した相続者を探して許諾を得る(多くの場合、相続人は複数)という困難な作業を強いられます。許諾の問題がネックになって利用が困難になり、そのまま死蔵されてしまう著作物は少なくなく、保護期間の延長はそれに拍車をかけるという指摘があります。古い写真などをもとにイラストレーションを描こうとする場合も例外ではありません。イラストレーターが利用できる資料の範囲は確実に狭くなります。
著作物の公正かつ円滑な利用を促すという法の趣旨に照らすと、保護期間を無闇に延ばすことは 「利用されにくくなる」という点ではデメリットも大きいでしょう。

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