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2020.11.27

【レポート】第1回TISイラストレーション・フォーラム 「イラストレーターが 0(ゼロ)から創る仕事」

2020年11月6日(金) TISイラストレーション・フォーラム 「イラストレーターが 0(ゼロ)から創る仕事」が開催されました。
ゲストはイラストレーターのタケウマ氏(TIS会員)とデザイナーの原田祐馬氏(UMA / design farm代表)、ナビゲーターにイラストレーター小池アミイゴ氏(TIS理事長)。 関西から各地で活躍するゲストに「能動的な仕事の仕方」についてお話いただきました。
原田さんは大学で建築の勉強をされて現在はグラフィックデザイナーという変わった経歴の持ち主で文化、福祉の分野で仕事されています。 イベントテーマは「0(ゼロ)から創る仕事」ですが「0.0001から1にしたり1を0.5にしてから創る仕事が多いと思っている」というのが原田さんの感触だそうです。 それぞれの実例を話して下さいました。

◎0.0001を1にする仕事→児童養護施設 森の木 大分県
依頼内容:「施設の壁紙をえらんでほしい」
原田さんがやったこと: 1.空間作り→壁紙だけでなく窓の飛沫防止フィルムなどにも美しい色を施した。「子供たちが元気になれるような空間にしたい」という思い。
2.家具の選定、組み立て→無印良品と組み、子供たちに家具を選んでもらいそれを自分たちで組み立てるようにした。無印の家具デザイナーに製品の話をしてもらった。「子供たちが物を大事にするかもしれない」という思い。

◎1を0.5にしてから創る仕事→みたらしだんご。「おいしい」をつくる 大阪
依頼内容:「何かの商品のデザイン」
原田さんがやったこと:廃版寸前商品のみたらし団子の改良。
パッケージはもちろんのことたれの出汁をかつおから関西になじみのある昆布に変えたり、もちの固さ、タレの量を調整。コストダウンのためにサイズを小さくし、その浮いたコストで材料を良いものに変えた。

<<タケウマさんから原田さんへの質問>>
Q:「最初受けた依頼とは全くちがうアウトプットをしているのはなぜか?」
A:「依頼とクライアントが本当に到達したいアウトプットは違うことがあると思っている。クライアントは依頼内容を整理して依頼してくるがその根底にどんな問題を抱えているかをヒアリングし直すようにしている。」

Q:「最初にあった依頼から増えた分の制作時間と製作費についてクライアントに説明するときに大切なことは?」
A:「最初は相手の予算との差が出てくるが一回目の依頼で一緒に考えてくれる仕事のパートナーだとクライアントに分かってもらえたら次からは予算の段階から相談してもらえることが多い。」 「最初の信頼関係の構築の方が金銭的メリットより大切」

Q:「ゼロから創るとなると収益が読めないし相手にはまだ収益がない段階でどうやってプロジェクトをスタートさせるか?」
A:「むこうの予算を踏まえてどうやって動くかを考える。「ならなら」というフリーペーパーは外国人観光客への本を作りたいという依頼だった。が、一番やりたいことは外国人に奈良はおもしろいと思ってもらうことだと考えたのでフリーペーパーを提案した。印刷所が輪転機を持っていてたくさん刷ることに長けていたので印刷所の営業ツールにもなるようにした。」

Q:「いろんなところを上手く巻き込んでいるが熱意で巻き込んでいるのか?」
A:「思いつくと時間関係なくすぐにfbのメッセージを送ったりしている。」

Q:「受け身で仕事することに慣れているとそういう時に気後れしてしまうが例えばぼくが原田さんにメッセージを送っても大丈夫なのか?」
A:「大丈夫だと思います。ポートフォリオが届くよりこういうことを一緒にやりたいと言われるほうがうれしい。」

Q:「最初の依頼はどういうものだったのか?」
A:「最初は本の装丁だった。当時はデザイナーではなかったがアシスタントとして関わっていた美術家のプロジェクトが面白く、その記録集を提案した。が、お金がなくて企画書を作り出版社を回った。最終的に出せることになったが製作費の半分の200万円は自分たちで集めるように言われた。協賛などを募りかき集めた。デザイン費はその費用に入ってなかったので見様見真似で自分でデザインをした。」

Q:「クライアントとのコミュニケーションの取り方は?」
A:「案を出すときに「決めてくれ」とは言わないようにして「どう思いますか」と投げかけている。そうするといい意味でむこうの態度が柔らかくなる。「こっちがいい」などと言って相手を誘導はしない。」

Q:「依頼の仕方でやめてほしいことは?」
A:「切羽詰まった相談が多いので誰かのためになるのならやりたい。こういうことが出来る人いませんか?というのがとても多い。」

Q「そういう時に見つけやすいイラストレーターはどんなイラストレーターか?」
A「インスタやtwitterを積極的に見るようにしている。」

Q:「イラストレーターが企画提案をするときにこういうものならうれしいというものは?」
A「カジュアルな依頼でいい。」

<<参加者からゲストへの質問>>
Q:「イラストレーターを目指そうとしている。原田さんがこれから仕事につなげていく状況であればどういう風に仕事を探しますか?」
原田:「バイト先でデザインをやっていると言って知り合いの店のロゴなど少しずつ増やしていった。できる?と聞かれたら必ずできると言っていた。友達の名刺を自分で作ったりしていた。」
小池:「形になった何か一つがあるとそこから広がる。観念的な絵ではなく物になっていると物語があってよい。」

Q:「持ち込みをして初めて仕事がもらえるまでどれくらい時間がかかりましたか?」
タケウマ:「最初は自分だからではなく描ける人がいたからという依頼だった。タケウマだからという依頼は一年後。3-4年前の仕事を見て依頼がくることもある。タッチや時期も関係するので一概には言えないが。」
小池:「チョイスで入選したらすぐに仕事がきた。風景の絵で入選したが依頼は人物の絵だった。こうありたいという思いに対して人はその通りに返してくれないものだが、一回仕事したらその仕事が次につながっていきそれを大切にしている。 営業は2か所だけ行ったが自分の言葉で話せず、違うと思いやめた。その人らしい仕事のアプローチがあると思う。教科書通りの営業もやりつつ、自分だけのコミュニケーションを絶えず見つけることがとても大切。」
原田:「自分たちで関わったものをどうやって伝えるかをやっていて仕事にしようと思ってやってない。仕事が営業してくれた。」

Q:「建築を学ぶ大学3年です。原田さんも建築を学んでいて今デザイナーをやっているが気持ち的に建築で学んだことからグラフィックにどうやってシフトしましたか?
原田:「本の仕事のほかに現代美術館などの設計をいくつかやっている。建築は合法的に粘り強く作っていくものだが自分が短気な性格なので完成まで現場と一緒に走れないと思った。グラフィックデザインは短距離走のように仕事ができるので安心感があった。 今は建築家と仕事をするのがおもしろい。建築家と組んでコンペに出たりしていて大学で、学んだことが生きている。建築用語が分かったり役に立つことが多いので4回生までは建築を頑張った方がいいと思う。」
タケウマ:「プロフィールにも建築を学んでいることを描いた方がいい。」
 



第一部を聞いて能動的な働き方の一歩はクライアントの立場に立って考えることなのだなと思いました。外側からならクライアントが気づかないことも気づけるかもしれません。そして考えたことを伝える勇気を持つことも必要です。基本、イラストレーターは受注側なのでなかなか難しいですが勇気をもって自分が考えたこともこれからは出し惜しまず絵にいれていこうと思いました。その積み重ねで何か変わっていくかもしれません。

第二部「SDGsについて」
最初にイラストレーターがSDGsを考えているということを世の中に発信することは力になると小池さんは言いました。
国連が定めた人類や地球を守るための17の目標のことで小池さんが組んで直接仕事をしている企業の社員でSDGsのバッチをつけている人はとても多いみたいです。
SDGsは飢餓、エコロジー、ジェンダーフリーなど細かく分かれていて、「うちの会社は何番をやります」とただ宣言しただけでは実際に何をやりたいのかが伝わらないので、「SDGsをイラストレーション化してSDGsを実践することでどういう風に変わりどういう世界になりどんな人が幸せになるのかを表現しませんか?」と小池さんは企業の人たちに話をするそうです。
そして「SDGsは経済用語みたいになってしまっていてニーズがあるにも関わらず説教臭いものになっている。」「イラストレーションにはそれを打開できる力がある。」「イラストレーションで何ができるのだろうと一日一分でも考えだけでもイラストレーションの幅が広がっていくと思う。」と、話されました。

 

 



第二部は短い時間でしたがイラストレーターとしての社会とのかかわり方をとても考えされられました。イラストレーションはツールとして捉え、これから自分がやれることを考えようと思いました。

TISではこれからいろんなフォーラムを開催していく予定です。
次回もよろしくおねがいいたします。